クロスロオド新刊が神憑ってやがる
これ新刊出るたび言ってるけどね
「知恵の実」
「魔法使いになりたいんだ」
「ふうん」
興味なさげに彼女は僕を見る。
「わりと真面目だけれど」
「なりたいならなればいいと思って。別に私はとめないよ」
彼女は言いながらココアを一口飲んだ。彼女のマグカップから漂う湯気が、この部屋を暖める。窓の外は晴天で軽い肌寒さを感じる程度だろうと僕は想像する。
「まあ、それはそうだけど」
「大事なのは宣言することでなく、きちんと実現することじゃない?」彼女はココアを飲み干したらしく、マグを流しに持っていく。「だから理由なんか聞かなくてもいいと私は思ってるの」
そう言われると僕は何も言えず、こくりと頷いた。
「さて、私は友達と約束あるから出かけてくるね」
彼女はさっとジャケットを羽織り、マフラーを巻いた。
「魔法使いになるなら、しっかり林檎を食べなさい」
彼女はそう言って笑うと玄関へ迎う。玄関に立て掛けてある箒を手に取り、ドアノブを回した。想像していたより冷たい風が部屋の温度を冷ます。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
彼女は箒にゆったりと座り、ぱちんと指を鳴らした。箒が宙に浮きあっと言う間に飛んでいく。
「俺も頑張ろう」
一人呟いて、僕はテーブルのうえの林檎を手に取り、噛った。
09/12/20 もこ
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