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「毎日」
目を覚ました時、今日で世界が終ることを感じた。
誰が決めたわけでもない、今日の十一時五十九分五十九秒以下省略を最後にこの世界は消えてなくなる。らしい。
そしてそれは僕だけに与えられた啓示だった。
ブラウン管は今日も誰かが死んだニュースを流した後に、芸能人のスキャンダルで盛り上がっている。親は僕にしっかり勉強しろと説教を垂れ、友達は下品な冗談でゲラゲラ笑っている。先生は教科書を棒読みしながら、時々つまらない話をして一人で笑う。コンビニの店員は無表情でレジを打つ。
それはいつも通りの日常だった。最後の日にも、世界は変わらない。きっと僕だけがぼんやりと最後を最後らしく見届けるのだろう。そう思った。
最後の景色と思うと、周りの物すべてが愛しく思えた。
そうだ、今まで気づかなかったのが不思議なくらい世界は奇跡で満ち溢れている。
太陽や風や空、雲、木々や葉、花、土や、星や月、水、誰かの声、足音、さえずり、それらを含むこの世界。
僕は幸せだった。この世界に生まれてきたこと、ここまで生きてこれたこと、そして最後を迎えられること。その全てが幸せに満ちている。なんて愛おしい、なんて美しい世界。
夜、布団に入ってぼんやりと天井を見つめる。あと数分で世界が終わるのに、僕は満たされている。恐怖はなかった。ただ、僕は受け入れるだけでいいのだ。世界はそのようにできているから。
目を瞑る。終りが近づく。
終りが訪れる。
世界を飲み込んでいく。
*
そして僕は目を覚ます。
いつも通りの日常が待つ、新たな世界で目を覚ます。
再び世界の終わりを感じながら。
09/12/27 もこ