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「(^v^)」



「携帯って面白い?」
隣で携帯をいじりながら彼女は僕に尋ねる。
「いや、それ俺の台詞」
この一時間携帯をいじり続けている彼女が、ぼんやりと本を読んでいる僕に問いかけるのはおかしいと思う。彼女はじっと携帯の画面を眺め、僕を見ようとはしない。
「私は全然面白くないの。でもメールって、毎日くるじゃない。コミュニケーションじゃない。それって大切じゃない」
「はあ」
「だからね、延々来るメールに丁寧に返信してる訳。馬鹿みたいな言葉遣いで、絵文字も付けてる訳。そういうのが人間関係で大事なことな訳」
彼女は淡々と、言葉を繰り返しながら携帯を打つ。
「そういうのって、面白い?」
「それは俺に聞くものじゃないよ」
僕は肩をすくめながら、本に栞を挟んだ。
「だけどね、なんかどうしたらいいか分からないじゃない。繋がりが大事で、でもそれをしていると何もできなくなる。ただ大事にしなくちゃいけないことに縛られてるだけな気がする」
「うん」
「私自分じゃ決められない。だって私にとって何が一番大事なんて分からない」
僕はため息を吐いて、彼女が持っている携帯を奪う。
「回りくどいね」
「こんな顔でもかまってちゃんなの」
彼女は無表情という言葉を絵に描いたみたいな顔でこっちを向いて、それから口元をゆがめる。
「携帯じゃ簡単に笑顔が出せるのに」
「不細工で可愛いよ」
僕は壁に向かって携帯を投げた。かしゃっと音が鳴って彼女の携帯は真っ二つになった。彼女はそれを見て満足げな顔をする。
「こういう方が、きっとずっと面白いわね」
「どうかな」
彼女の腕が僕の首に回る。
僕はそっとキスをする。


09/12/29 もこ
 

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