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「気付いて」
一人部屋でココアを飲みながら、泣いている。
誰が? 自分が。
自己嫌悪と不安と孤独と、その他諸々の感情が自分の中に溢れてくるのだ。それに耐えられなくて泣いている。
がたんがたんと遠くで電車が走る音が聞こえて、カラスが鳴くのが怖くて、ああ自分には何もないんだってことを思い知って、誰にも求められていないのに生きているのに絶望して、でも死にたくないと情けなく怯えている。
「ごめんなさい」
誰にも求められていない謝罪をしたのは、自分で自分を赦したいからだ。なんて矮小な人間なんだろう、でもそんな自分を嫌いになれなくて、胸が痛い。
窓の外はもう夕方で、太陽が落ちて世界が真っ赤に染まっている。
なんて美しい世界だろう。
私はこの世界が好きだと思う。暑くたって寒くたって、嵐の日だって、土砂降りだって、梅雨だって豪雪だって大好きで、木々や電柱、高く伸びるビルや、河原や石ころや、夜中のコンビニや近所のボス猫が愛しくてたまらないのだ。私は世界に恋をしている。
それなのに私は孤独に怯えて不安に呑まれて、自己嫌悪を繰り返している。馬鹿みたいな自分が、それでも嫌いになれないで一人泣いている。あるいは世界に恋をしているから、それらに嫌われたくないと怖がっているのかもしれないけれど。
止まらない涙がマグカップの中を伝って、ココアを冷ましていく。私はますます孤独になっていく。
「誰か」
消えそうな自分を見失わないように呟く。
「誰か、気付いて」
私はここに居ると、震える声で、途切れそうな声で、私は誰かを呼んでいる。
誰にも届かないと分かっていながらも、私は誰かを呼んでいる。
ずっと、ずっと。
泣きながら、ずっと。
10/01/17 もこ