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mixiは毎日だけどこっちに転載するのは時間かかっちゃって申し訳ない
こっちを携帯で弄れるように設定してないからなあ
一応毎日は書いてますよ



「ルーズリーフ」


「ああ、眠い」僕は机に突っ伏して呻いた。「腹も減った」
「俺も眠いし腹も減った。でもまずお前は課題終わらせろ」
隣で友人はB5のルーズリーフに資料をまとめている。僕と彼は専攻が違うので内容はよく知らないけれど、量子物理学の入門みたいなところをやっているとは聞いた。僕はまったくの文系なので物理学など意味がわからない。
「んなこと言われたってですねえ。興味も無い古典の研究なんかやってて楽しくないですよ。なんすか源氏物語って。俺は太宰治が研究したいんだよ」
喚いたところでどうにもならないのだが、正直喚かずにはいられない。論文をいくつか読んだはいいが、内容は理解できても面白くないことこの上ない。
「別にゼミの課題じゃないんだろうが。そんなもん適当に書けばいいのに、クソ真面目に点数取ろうとするから終わらないんだろ」
「やるからには面白くしたいじゃん」
「そういうなら嘆かず喚かずしっかりやれ。とりあえずペンを持て」
まあ彼の言うことは正しいので僕はペンを持つ。論文の引用部をメモしながら、ちらっと彼を見る。
ゆるいパーマの髪は少し茶色味がかっていて柔らかそうだ。くそう。
「髪さあ、どうやったらそんな柔らかくなんの?」
「別になんもしてねえ」
「いや、お前きっと変な化学物質とか調合してんだろ。それで髪がそんなに柔らかいんだ」
「あほか。理系なんだと思ってんだお前は」
呆れ顔で彼はため息を吐いた。僕もいい加減軽口を叩くのをやめてルーズリーフに向かう。
しばらく論文や今までのノートやメモと向き合い、それから窓の外を見る。もう外は暗くなっていて、ぼんやりと月が浮かんでいる。ふと腕時計を見ると既に午後六時を過ぎている。
「いとねぶたし」僕は机に突っ伏して呻いた。「ひだるし」
「日本語を喋れ」
「ある意味正しい日本語だけどな」
彼のルーズリーフは見る見るうちに埋まっていって、僕のルーズリーフは埋まらない。
時間はぼんやり過ぎていく。


09/12/10 もこ



「帰り道」

「おい」
「なによ」
がちがちと奥歯が鳴る。セーターの上にカーディガン、スラックス下にジャージを着込んでいるのに震えが止まらない。
「寒いよ」
「私のが寒い」
彼女はスカートを指しながらぐあーっと俺を睨む。まあ確かに足を守るのがタイツ一枚というのは心許ないだろう。
「ジャージはけば?」
「私、ああいう格好嫌いなのよ、見苦しくて」
「ジャージ似合わなさそうだしな」
軽口を叩いた瞬間、素早くロウキックが俺のふくらはぎを襲った。いてえ。
「あんたの軽口は欝陶しいのよ」
俺はしゃがみこんでしばらく足をさすった。寒さのせいで普段の何倍か痛みを感じる。
「マジ蹴りは勘弁してくれ」
「軽口直すなら考えとくわ」
悪怯れる様子なく彼女が言うので僕は呆れる。なにか文句の一つでも言い返せば再びあのロウキックが俺を襲うのは分かり切っているので、ため息を一つ吐いて黙っておく。吐いた息は白くなって風にさらわれていく。
しばらくして彼女がぽつりと言った。
「もう三ヶ月で終わっちゃうのか」
「ああ」
「高校生なんかホントあっという間だったな」
「俺は3年間お前に蹴られっぱなしだった」
言ってからまずいと思った。余計なことをまた言ってしまった。直感でやばいと感じ身構えるが、いつものロウキックは来なかった。
彼女は俯いていて、俺は拍子抜けする。
「ばか」
小さく呟いた声の意味がわからなかった。
「なんだよ」
「しらない」
早足で彼女は俺を追いぬく。不機嫌な声が涙ぐんでいるように聞こえて俺は焦る。
「おい、なんなんだよ」
早足でぐんぐん進む彼女の手を取る。手を振り払おうとしながら、顔をこっちに向けない。
「言えよ、なんだよ」
「ばか」
俺は手を離さなかった。冷たい手が触れ合うことで少し熱を持つ。
「おい」
「なによ」
泣き声に俺は答える。
「すきだ」
彼女が不意に俺を見る。俺は目を逸らさない。ぼんやりとする彼女を見つめる。
しばらく沈黙のあと、彼女は怒った顔をして俺の手を振り払った。
「私のが、好き」
彼女は俺を指して叫んだ。


09/12/11 もこ
 


「隣の猫。」

「さむいねえ」
「にゃあ」
炬燵で一人と一匹丸くなる。
「ねむいねえ」
「にゃあ」
この暖かさが最高の幸せだと感じる。
「このまま寝たら風邪ひいちゃうねえ」
「にゃあ」
明日は彼氏とデートなので風邪は困る。
「ベッドに、移動しますかあ」
「にゃあ」
ごそごそと炬燵から動き、ベッドの上に登る。
「おやすみなさい」
「にゃあ」
彼女の隣で私は体としっぽを丸めた。


09/12/12 もこ

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