「ヤンデレコミュニケーション」
「君が欲しい」
私は呼吸するように口を開く。
「この部屋の中を、君でうめつくしたい」
彼は黙って私の言葉を聞いている。
「馬鹿みたいだし、不気味に思えるかもしれない。分かってほしいなんて言わない」
私はそっと彼の髪に触れた。
「ただ、聞いていて欲しい。私は君が欲しい」
彼は笑わず、嫌な顔もしない。ただ、私を見つめていた。
「この部屋に閉じ込めて、君の声も腕も、指先も、この髪も。君の全て、全ての醜いものだって、全て私のものにしたい」
狂っているかもしれない。そんなことは承知している。それでもいい。
「君が私を好きかどうかも、私が君を好きかどうかも、どうだっていい。ただ、君が欲しい」
それはただの物欲と何一つ変わらないのかもしれない。そこに愛はないのかもしれないけれど。
「私にとって、それが幸せなの」
なんて歪んでいるんだろう。なんて馬鹿みたいなんだろう。それでも私は、こんな私を変えられない。
「醜いよね」
自嘲気味に笑い手を離す。一度だけ深呼吸をした。彼は笑わず、嫌な顔もしない。
彼が不意に、手を伸ばした。私はびくりと体を震わす。
私の髪に、その手が触れた。
「その醜さが」
彼は呼吸するように口を開く。
「僕は欲しい」
10/03/07 もこ
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