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なんだかんだで続けられるもんねー
ネタが尽きてきましたが頑張る る
コトリンゴのアルバム買った!
海の向こうに行った人が切なくて切なくて
大好き!!
あと久々に本買った
頑張って読もう

以下SS



「またね」


「誰かが忘れたっていいんだ」
赤く焼けた空を見ている。
「他の誰かが、忘れても、いい。世界とか宇宙とかから居なかったことにされても、構わないと思う」
泣きそうになりながら、私は頷く。
「ただ、一人だけでいい。君だけが俺のことを覚えてくれていれば」
繋いだ手を彼がぎゅっと握り締めた。
「ねえ、俺は君を愛しているんだ。それを忘れないでいて。この世界のどこにいたって、俺は君を思っているから」
こぼれそうになる涙を、こらえた。
「だから覚えていて。君が覚えていてくれればそれで、俺は生きていけるから」
消えそうになる感触を、必死に繋ぎ止める。
「もう、行かなきゃ」
暖かい手が、私から離れた。強く風が吹く。
「またね」
さよならでもばいばいでもない、きっとまたいつか会えると、彼は笑った。
太陽が去っていく景色に、私は泣いた。

*

空を切る飛行機が見える。
太陽を追いかけるように、彼の乗った飛行機が遠くへ消えてしまう。
手の中にじんわりと残る彼の優しさを、ぬくもりを、私は必死に記憶する。
覚えていて、と彼が言った。私は覚えている。ずっと、覚えている。
この先百年経って、彼と会えなくたって私は覚えている。
それだけが、私と彼を繋ぐ誓いだから。
彼が私の知らない地で、私の知らない空や雲やたくさんの人と出会っても、最後に私のことを思っていてくれるなら。
私は死んでもこの記憶を失くしたりしない。そう思う。
涙をこぼして、それから笑う。無理やりな笑顔はきっと不細工で、でも彼は許してくれると思う。
笑って手を振ってくれると思う。小さく飛行機に手を振りながら、私はずっと空を見ていた。
「またね」
言葉にして私はまた泣いてしまう。
赤い雲が、黒く落ちていく世界で、私は約束を守り続ける。
その先に朝焼けがなくても、きっと。ずっと。


09/12/16 もこ

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「朝焼け」

久々に出た外は空気が冷たくて鼻の先と耳が痛かった。
息はすぐ白くなって、消えてしまう。ストールを巻き直し、口元まで隠した。ふと空を見上げる。夜明け前の色素の薄い世界が広がっている。ぼんやりと白い月が見えて時間の感覚が分からなくなる。遠くで鳥のさえずりと、原付のエンジンをふかす音が耳に届く。朝練に向かう学生服とか、出勤途中の寝むそうなサラリーマンとかを詰め込んでローカル線の電車が走っていく。
そして、道の先を見て、息を止めた。
「おかえり」
微笑んでいる彼が立っている。
優しい声が聞こえる。私が三年間、求め続けた声が聞こえる。空の雲が太陽で黄金色に焼ける。
なんて美しいのだろう。なんて鮮やかなのだろう。自分が目を開くだけでこんなに世界は眩しかった。生きているという安心感を感じられる。その幸福感。
くすんだ壁を見つめ続けた三年間、この世界は、そして彼は自分を待ち続けてくれていたんだ。
ぼんやりとした意識は少しずつ実感に変わる。
不意にぼろぼろと、涙がこぼれた。
たくさんのことがあったし、これからもたくさんのことが起こる。会いたい人も会いたくない人も居る。伝えなきゃいけないことも、誰にも言わないこともある。
それは不安で、怖いことかもしれないけれど。
きっと大丈夫。
彼やこの世界が、私を待っていてくれるから。
私は時間をかけて、ちゃんと生きていける。
一歩、ぎゅっとアスファルトを踏みしめた。
黄金色の雲が眩しくて、また泣いた。



09/12/16 もこ

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十二時超えて書き上げたので前回今回は日付が一日遅れ
がっでむ
もうすぐ一週間ですよ



「枝豆と梅酒ロックとシンパシー」


「おいしい?」
枝豆ばっかり食っていたら声をかけられた。
「好きなんだよ、枝豆」
「ふうん? お酒より?」
「うん。でもなんで?」
「最初の一杯以降、飲んでないから」
彼女が笑いながら僕の半分飲みかけの梅酒ロックを指す。氷がかなり溶けて随分薄まっている。
「あんまり酔うの気持ちいいと思わないから。枝豆美味しいし」
「枝豆が美味しいのはすごくわかるけど。変なの」
「そうかな」
「大学で急にお酒飲み始めて、はっちゃける子多いじゃない」
「そういうの、格好わるいと思わない?」
僕は少し笑いながら彼女に呟く。こういうことを他の子に聞かせて、気分を害されるのはよくない。
彼女はそうかもと笑って、
「だからこういう場ではあんまり飲まないわけだ。いいね、そういうの。気持ち分かるな」
「俺が食べる方が好きっていうのも大きいんだけど」
僕は言いながらまた一つ枝豆を口に入れる。ちょうど良い塩味が口にほんのりと広がる。
「ふうん? 自炊とかしてるの?」
「一応。でも一人だとあんまり作らないかなあ。誰か居れば作ってあげようってなるんだけど。自分の分だけって、分量的にも気持ち的にも難しいんだよ」
ふうんと彼女は頷いて、チューハイを傾ける。少し沈黙が合って、周りのざわつきが耳についた。
「じゃあこれ終わったら、私にお酌ついでにおつまみ作ってよ」
「はい?」
「個人的に飲むのならいいんでしょ?」
「いやまあ、そうだけれど」
女性のそういった誘いは基本的に初めてで少し対応に困る。
「あ、もしかして彼女とか居る?」
「居ない」僕は即答する。「あんまりそういう経験がないから」
「うそ。なんか意外。割と経験豊富に見えるけど」
それは一体どういう意味だろうか、僕は判断に迷って半端に苦笑する。
「でもまあ、君がいいならお酌ぐらいはするよ」
「本当? ありがと」
彼女は満足げに頷き、それからずいっと俺の目の前まで近付く。不適な笑みだ。
「ついでに寝床も用意してくれたらいいよね」
「はい?」
「冗談」
すっと彼女は遠ざかって、ふらっと他の席に歩いていく。
「またあとでね」
僕はふむ、と少しだけ間を置いてから梅酒ロックの入ったグラスを傾けた。温い梅酒が喉をじんわり熱くさせる。
すっと枝豆の皿に手を伸ばした。こつん、と指がからぶる。よく見ると枝豆の皿は既に空っぽで、ひょろひょろと手を引っ込める。なんだか落ち着いていない自分が恥ずかしくて、グラスで顔を半分隠す。
グラス越しに見える彼女は、友人達とけたけた笑っていて、自分と話をしているときとは何だか表情が違うことに気付く。どこか作ったような笑みは、僕自身を見ているような違和感とシンパシーを覚える。きっとそれは、そういうことなのだ。
「さて」
彼女の言葉がどういう意図であれ、僕にできるのは簡単な料理を作ってお酌をすることだけだ。
とりあえず今はこの退屈な飲み会を過ごすのに満足できるつまみを探しながら、彼女を気楽にさせてあげられるメニューを考えようと思う。
何かが起こりそうな予感はどうあれ、それが今の自分にできることだろう。
ざわついた気持ちは後で考えればいいのだから。


09/12/15 もこ
 

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一つ一つわけて載せなさいと彼女に怒られたので分けます


「泳いでいく魚達の前で考えること。」

ざわざわと人混みが目の前を流れていく。
ベンチに座って缶コーヒーをちびちび飲む。色々な人が歩いている。ために目線が合って気まずさに視線を逸らす。ぼんやりと眺める人の流れはまるで水族館の魚みたいだ。
左右から様々な人の群れが通り過ぎていく。
ごちゃごちゃとした音がイヤフォンの隙間から聞こえてきて、僕は孤独になる。
きっとみんなが感じているのだ。このざわざわとした世界と自分との距離感を。喧騒の中に身を置くほど、自分は一人だと感じずにはいられないのだ。誰もが世界と繋がりたくて、着飾ったり電波を飛ばし合ったりしている。それが本当の繋がりじゃないと分かりながら、何度も繰り返す。意味が無いと分かっていても。
孤独は消えない。それだけはきっとこの世で数少ない絶対だ。
「また君は難しいこと考えてる」
すとんと隣に誰かが座る。それが誰か僕は知っている。
「考えてないよ」
横を向いて僕は半分残った缶コーヒーをはいと渡す。彼女はにっと笑ってそれをありがとと受け取る。
「うそつき」
「そうだね」
いつもの調子でけたけたと僕と彼女は笑う。
「でも、やっぱり考えてないんだ。結論に達しないんだから。堂々巡りのいたちごっこで、答えが出せたことなんかないんだよ」
「いいよ、答えなんかでていなくても」
彼女はそっと水槽みたいな流れを眺めながら缶コーヒーを傾けた。彼女にその景色は、どう見えているんだろう。僕と同じなら、きっと幸せだけれど。
「君はちゃんと分かってるんだよ。何が大事で、大切で、何を選べばいいか。だから、あんまり考えて禿げたりしないでね」
苦笑しながら僕は頷く。
彼女の言葉に僕は救われている。孤独の中で自分達もまた、もがいてもがいて繋がろうとする。それがただ気休めでもいい。僕は彼女を通して世界と繋がっている、そう思う。そう、思っているだけでいい。本当の繋がりでなくたって、実感としてそれは僕の中にある。
「ごはん、食べにいこうか」
「うん」
僕が立ち上がって、彼女が空になった缶をぽいとゴミ箱に投げる。からんと音がなる。
「何食べる?」
「魚介類、かな」
彼女が言って、僕が笑った。


09/12/14 もこ
 

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mixiは毎日だけどこっちに転載するのは時間かかっちゃって申し訳ない
こっちを携帯で弄れるように設定してないからなあ
一応毎日は書いてますよ



「ルーズリーフ」


「ああ、眠い」僕は机に突っ伏して呻いた。「腹も減った」
「俺も眠いし腹も減った。でもまずお前は課題終わらせろ」
隣で友人はB5のルーズリーフに資料をまとめている。僕と彼は専攻が違うので内容はよく知らないけれど、量子物理学の入門みたいなところをやっているとは聞いた。僕はまったくの文系なので物理学など意味がわからない。
「んなこと言われたってですねえ。興味も無い古典の研究なんかやってて楽しくないですよ。なんすか源氏物語って。俺は太宰治が研究したいんだよ」
喚いたところでどうにもならないのだが、正直喚かずにはいられない。論文をいくつか読んだはいいが、内容は理解できても面白くないことこの上ない。
「別にゼミの課題じゃないんだろうが。そんなもん適当に書けばいいのに、クソ真面目に点数取ろうとするから終わらないんだろ」
「やるからには面白くしたいじゃん」
「そういうなら嘆かず喚かずしっかりやれ。とりあえずペンを持て」
まあ彼の言うことは正しいので僕はペンを持つ。論文の引用部をメモしながら、ちらっと彼を見る。
ゆるいパーマの髪は少し茶色味がかっていて柔らかそうだ。くそう。
「髪さあ、どうやったらそんな柔らかくなんの?」
「別になんもしてねえ」
「いや、お前きっと変な化学物質とか調合してんだろ。それで髪がそんなに柔らかいんだ」
「あほか。理系なんだと思ってんだお前は」
呆れ顔で彼はため息を吐いた。僕もいい加減軽口を叩くのをやめてルーズリーフに向かう。
しばらく論文や今までのノートやメモと向き合い、それから窓の外を見る。もう外は暗くなっていて、ぼんやりと月が浮かんでいる。ふと腕時計を見ると既に午後六時を過ぎている。
「いとねぶたし」僕は机に突っ伏して呻いた。「ひだるし」
「日本語を喋れ」
「ある意味正しい日本語だけどな」
彼のルーズリーフは見る見るうちに埋まっていって、僕のルーズリーフは埋まらない。
時間はぼんやり過ぎていく。


09/12/10 もこ



「帰り道」

「おい」
「なによ」
がちがちと奥歯が鳴る。セーターの上にカーディガン、スラックス下にジャージを着込んでいるのに震えが止まらない。
「寒いよ」
「私のが寒い」
彼女はスカートを指しながらぐあーっと俺を睨む。まあ確かに足を守るのがタイツ一枚というのは心許ないだろう。
「ジャージはけば?」
「私、ああいう格好嫌いなのよ、見苦しくて」
「ジャージ似合わなさそうだしな」
軽口を叩いた瞬間、素早くロウキックが俺のふくらはぎを襲った。いてえ。
「あんたの軽口は欝陶しいのよ」
俺はしゃがみこんでしばらく足をさすった。寒さのせいで普段の何倍か痛みを感じる。
「マジ蹴りは勘弁してくれ」
「軽口直すなら考えとくわ」
悪怯れる様子なく彼女が言うので僕は呆れる。なにか文句の一つでも言い返せば再びあのロウキックが俺を襲うのは分かり切っているので、ため息を一つ吐いて黙っておく。吐いた息は白くなって風にさらわれていく。
しばらくして彼女がぽつりと言った。
「もう三ヶ月で終わっちゃうのか」
「ああ」
「高校生なんかホントあっという間だったな」
「俺は3年間お前に蹴られっぱなしだった」
言ってからまずいと思った。余計なことをまた言ってしまった。直感でやばいと感じ身構えるが、いつものロウキックは来なかった。
彼女は俯いていて、俺は拍子抜けする。
「ばか」
小さく呟いた声の意味がわからなかった。
「なんだよ」
「しらない」
早足で彼女は俺を追いぬく。不機嫌な声が涙ぐんでいるように聞こえて俺は焦る。
「おい、なんなんだよ」
早足でぐんぐん進む彼女の手を取る。手を振り払おうとしながら、顔をこっちに向けない。
「言えよ、なんだよ」
「ばか」
俺は手を離さなかった。冷たい手が触れ合うことで少し熱を持つ。
「おい」
「なによ」
泣き声に俺は答える。
「すきだ」
彼女が不意に俺を見る。俺は目を逸らさない。ぼんやりとする彼女を見つめる。
しばらく沈黙のあと、彼女は怒った顔をして俺の手を振り払った。
「私のが、好き」
彼女は俺を指して叫んだ。


09/12/11 もこ
 


「隣の猫。」

「さむいねえ」
「にゃあ」
炬燵で一人と一匹丸くなる。
「ねむいねえ」
「にゃあ」
この暖かさが最高の幸せだと感じる。
「このまま寝たら風邪ひいちゃうねえ」
「にゃあ」
明日は彼氏とデートなので風邪は困る。
「ベッドに、移動しますかあ」
「にゃあ」
ごそごそと炬燵から動き、ベッドの上に登る。
「おやすみなさい」
「にゃあ」
彼女の隣で私は体としっぽを丸めた。


09/12/12 もこ

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